監督コメント

一杯のカクテルに秘められた物語の数々に耳を傾けて

昭和30年代に生まれたスタンダードカクテルの創作者の多くが鬼籍に入られる中で、今なお現役でカクテルを作り続ける井山さんの人柄に導かれるように、映画の企画はスタートしました。半世紀以上ものライフヒストリーを昨日のことのように楽しく語りながら、カクテル「雪国」を作り続けてきた井山さんのお店は、不思議と人を幸せな気分にする場所です。取材を通して、1杯のカクテルには無数の物語が内包されているのだと気付き、その物語に導かれるように、2年半の時間をかけて取材が続きました。お酒同士が出会い混ざり合ってカクテルが生まれ、そのカクテルとマスターの話を聞きにBARに人が集い、そこで会話が生まれていく。映画という体験も、もしかすると自分の人生と映画に写っている人生が混ざり合うようにして、観客の心に物語が作られていくのかもしれません。この映画も、カクテル「雪国」のように古びない物語として、映画を観た方の記憶に残ることを願っています。そして映画を観た後は、ぜひ自分好みのBARを探しに街へ出かけていただきたいです。そこには、きっと素敵な出会いがあるはずです。

映画へのコメント

冷凍庫のない時代にキンキンに冷えたマティーニを出した今井清さん、自分で「世界の沢井です」と言っていたオリオンの沢井さん、小さなBARだったけど人気のあった「クール」の古川さん、最近逝去された三笠会館にあるBAR5517の稲田さん、HBAの若林さん。この方達は日本のBARとカクテル文化を支えたレジェンドです。それなのに映像がない!!それがとても残念でした。ところが嬉しいじゃあないですか「井山計一さんとカクテル雪国」のドキュメンタリー映画が出来た。 やったね、これでカクテル「雪国」は永久不滅です。

―― 漫画家・古谷三敏(「BAR レモン・ハート」)

映画を観て、とにかくショックだった。世の中広いね、92歳現役で立ち仕事をしているマスターの姿に驚いた。その所作にただただ、目を奪われてた。そして、背中を押される感じがした。 82歳の私もまだまだ頑張れるってね。

―― 漫画家・さいとう・たかを(「ゴルゴ13」「鬼平犯科帳」)

静かな東北の町の古い喫茶店で、一途にシェイカーを振り続ける老バーテンダー井山計一さんは、あの世界的に有名な『YUKIGUNI』というカクテルを半世紀も前に創作した人だ。 「いつも誰かが楽しんでいる顔が見たい」只その一心で、カウンターに立ち続けるその姿は、 九十二歳の齢(よわい)を重ねても凜として美しい。ワシも見習わなければ!

―― 漫画家・ちばてつや(「あしたのジョー」)

井山さんのつくる「雪国」は人のこころを温かくする。それはつくる人が「誠実」だからだ。この映画を作った監督もまた「誠実」である。それは今の時代にこそ大切なことで観る人すべての心に届く。映画を観た誰もがその「誠実」と「雪国」に会いに酒田に行きたくなるだろう。 私もそのひとりだ。必ずケルンに行きます。

―― 映画監督・根岸吉太郎

カクテルはアートである。60年前に考案されたカクテル「雪国」。今やスタンダード・カクテルとして世界で愛されている美酒である。 そんな「雪国」を作り上げた山形県酒田にある喫茶「ケルン」の井山計一さんの人生が家族の絆の確認とともに優しく描かれる。 井山さんと「雪国」の起伏に富んだ昭和の時代が穏やかに薫ってくるようで愛おしく心地よい。

―― 映画評論家・村山匡一郎

一つの目的や目標を突き進む中で「雪国」がコンテストの一番となる。 私は常々「人生とは、その人の創造によって、生きがいが生まれる」と思っている。 この映画は、そのような人生を表現している作品である!

―― 服部栄養専門学校 理事長・校長・医学博士 服部幸應

スタンダードになるカクテルは、必ずレシピがシンプルで、姿が美しく、名前が良く、飲み飽きない。「雪国」はその典型だ。創作した井山さんが、雪深い東北のバーテンダーであるところにも物語を感じる。その人による一杯を味わうためには、東北酒田に行かなければならないのもいい。そこでは何千杯も作ってきた練達のスノースタイル、調合、シェイク、注ぎ方、差し出し方も味わえる。これこそ真の「オリジナル」だ。人生経験を経たやわらかな話し方もまた味のうち。おいしいカクテルはゆっくり味わうものだ。そのすべてを酒田に行かなくても見聞きできるのがこの映画。しかし観終わると「雪国」を飲むために酒田行きの切符を買っているだろう。

―― 作家/居酒屋評論家・太田和彦

変わらない場所で、変わり続ける自分の心を整える場所。それがバーである。 いつの時代も大切したいメッセージが、このカクテルと映画に秘められている。

―― ナガオカケンメイ(デザイン活動家)

3Dだったり座席が動いたりと映画の上映方式はどんどん進化している。そんな中でこの作品はそれらに増して特殊な映画だ。カクテルを眺める映画ではない。人を観察する映画でもない。これはグラスに注がれた若草色の液体の向こうに人生を透かし観る映画だ。

―― 劇作家・後藤ひろひと

淡い緑のカクテルに込められたバーテンダー井山計一さんの 人生への優しい眼差しと、北国の小さなBARで生まれたカクテルの 素敵な誕生秘話。 観たあと必ず「雪国」を飲みたくなります。

―― プロデューサー・橋本佳子

バーに立つことが生き甲斐の井山さんを見ていると、昔からバーテンダーはお客様、同業の方、家族に支えられ愛されながらバーに歴史を刻んでいくものなんだと感銘を受けました。92歳現役でカウンターに立たれている姿、時代が変わり趣向も変わり、お客様の顔を見ながら調整を変えるその姿勢はまさにどの時代でも愛される「YUKIGUNI」そのものだと想います。

―― バーテンダー・澁谷暁典(「BARエルロン」) 『2018サントリー ザ・カクテルアワード』にて優勝

「井山さんがシェイカーを振る時の、スッとした立ち姿がとにかくかっこいい!」 「そして、パチンコしたりひ孫と楽しそうにおしゃべりしいてる時の可愛らしさとのギャップがいい」 「観ているだけでたまらなく幸せな気持ちになれましたね」 「だけど、カクテル『雪国』がスクリーンに映し出されるたび、その隙のない美しさにハッとさせられて」 「酒飲みとして一度は背筋を正して見て、次からは酒を飲みながらゆるりと見返したい映画でした」

―― 酒の穴(スズキナオ+パリッコ)
(順不同)